日本型ライドシェアは本当に始まるの?想定される働き方や制度を徹底解説

来年度(2024年4月)から日本型ライドシェアが始まるという話は出ていますが、具体的な内容がまだ公表されていない現在、実感のない方も多いのではないでしょうか?

一体どういうことなのか、デジタル行財政改革会議に提出された国土交通省の資料や、日々開催されているライドシェアに関する会議で公開された内容をご紹介します。2024年3月現在では、公開されている内容は確定事項ではなく検討段階のものも含みます。

 

ライドシェアとは

ライドシェアとは

2011年にサンフランシスコでスタートした配車アプリUberを皮切りに、海外で広がり続けているライドシェアは、タクシー事業者以外の個人が自分の車を使って、空いた時間などに有償でお客さんを運送するというサービスです。

配車アプリを使ったライドシェアでは、運賃の支払いがアプリで完結するためトラブルが起きにくく、国によってはかなり浸透してきています。

 

日本でライドシェアが禁止された理由

一方、日本でライドシェアを解禁するにはいくつかの問題があり、禁止された状態が続いていました。

  • 安全面の懸念
  • 法制度の矛盾
  • タクシー会社の存続の意義

1. 安全面の懸念

ライドシェアでは、事故のリスクや暴行事件などのトラブルが懸念されています。通常のタクシーであれば、有償で乗客を乗せるための二種免許が必要になり、タクシー会社に雇用され一定の教育や運行する上での管理責任が発生します。一方で、海外のライドシェアの多くはアプリ内の規定はあっても、ドライバー個人の能力や良識に委ねられてしまいます。そのため、事故や事件の発生率が高くなるという海外のデータも過去にはあり、懸念されています。

2. 法制度の矛盾

上述したように、現行の道路運送法では、第二種運転免許を持っていない運転手が有償で乗客を輸送することは法律違反になります。また、通常のタクシーは事業用に許可を与えられた緑色のナンバーが必要です。白ナンバーの自家用車で国から許可を得ずにタクシー業を行う、いわゆる「白タク」は違法行為になり「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」が科されます。法制度を変えない限りは、矛盾が生じてしまいます。

3. タクシー会社の存続の意義

1.と2.の要件を満たしているのが既存のタクシー会社です。安全に滞りなく運行するために必要なタクシー会社ですが、ライドシェアを導入している国の多くで、タクシーのシェアをライドシェアに奪われ、タクシーは減少しています。安全なタクシー業界が衰退することで、問題が発生することを懸念しています。

実際には、ライドシェアの導入が禁止されたというよりも従来から定められている「道路運送法の第78条:自家用自動車の有償運送の禁止」を解禁しなかったことになります。2010年代半ばにも議論されていますが、この当時は第78条の改定は認められませんでした。

 

日本型ライドシェア解禁の理由

タクシー不足の原因

ではなぜ今になって日本でライドシェア解禁の動きが出ているのでしょうか。

理由は、タクシー不足が深刻になり、滞りない運行が実現できなくなってきているからです。タクシーは移動手段なので、その手段がなくなると行動を制限されて周囲の経済活動にも影響を与えてしまうことが懸念されています。

タクシー不足の原因

(1) コロナ禍によるドライバー退職

コロナ以前の2019年と比べ、この4年間でタクシードライバーが2割ほど減りました。出来高制(インセンティブ制)や個人タクシーとして働いていたタクシードライバーが、コロナ禍により収入が激減し続けられなくなったことが大きな要因になります。また、高齢者ドライバーが感染リスク回避のために退職するケースも少なくなかったようです。

(2) 利用者の回復

外出制限のあったコロナ禍で激減したタクシー利用者ですが、外食や旅行が以前のように行われるようになりタクシー利用者も回復してきました。一方でドライバー不足やコロナ禍により廃業になったタクシー会社の影響は回復せず、需要と供給のバランスが偏ってしまいました。

(3) インバウンド好調による外国人利用者の増加

海外からの訪日外国人数は、過去最高だった2019年の水準まで回復しており、昨今の円安の影響を受けて今後さらに増える見込みがあります。訪日外国人は、容易な移動手段としてタクシーを利用する人が多く、タクシーが不足することが予測されています。

上記以外でも、タクシー不足によって深刻な問題も発生します。タクシー需要の高い都市部は不足していても、待てばタクシーがくる状況ではあります。一方で、過疎地になるとタクシー会社が事業撤退するなどで、そもそもタクシー自体がなくなってしまっているケースも起きています。採算が合わず公共交通機関も既に撤退している地域だと、車の運転ができない高齢者が病院に行く時などには、タクシー不足が死活問題にもなってしまいます。

また、慢性的なタクシー不足以外でも、スポット的なタクシー不足もあります。特に都市部では利用希望者の数に対してタクシーが足りない時間帯があります。出勤時間や終電直後の時間帯などタクシーが確保しにくく、一方で昼間の時間帯から夜までは比較的タクシーが余っていることがあります。フルタイムのタクシードライバーの需要だけではなく、場所によってはこういった時間帯のスポット的なドライバーの需要も発生します。

これらの課題を解決するため、ライドシェアの必要性が高くなり、国をあげて解禁が急務となりました。

 

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日本型ライドシェアの条件

日本型ライドシェアの条件

「日本でライドシェアが禁止された理由」の項で触れましたが、日本でライドシェアを解禁するにはいくつか問題があり、それぞれ解決した上でスタートする必要があります。以下は完全なる確定事項ではなく、現段階でその予定で進めている条件となり、2024年3月中には具体的に決定され公表される予定です。

  • 安全面の懸念
  • 法制度の矛盾
  • タクシー会社の存続の意義

二種免許なしでもOK

二種免許ではない自動車免許でも、有償による乗客の運送が可能(制限あり)になります。それに伴い道路運送法78条3号を改変する予定になっています。

緑ナンバーじゃなくてもOK

自家用車を利用したライドシェアもOKになります。こちらも現行の道路運送法78条では禁止されていることなので、改変する予定になっています。アプリ側で乗車可能人数の設定などができれば、軽自動車も利用可能になるよう検討されています。

配車アプリ経由の乗客のみOK

通常のタクシーのような流し営業(車を走らせながら路上で乗客を見つける行為)はNGとなり、配車アプリで依頼が入った場合にのみ迎車して乗客を乗せることが可能になります。知識と技術がある二種免許ドライバーではない一般ドライバーにとって流し営業は危険を伴いますし、自家用車を使う場合は、タクシー専用車にある自動開閉などもないため、乗車・降車のリスクなどを考慮しています。

タクシー会社の管理下

基本的には、現状はタクシー会社に雇用され、タクシー会社の管理下にある人のみライドシェアのドライバーとして働くことができます。雇用形態は、アルバイトを想定しており、短時間で働くドライバーも勤務可能になる予定です。現状は業務委託契約は考えていないようですが、今後タクシー会社によって出てくる可能性はあるかもしれません。基本的には自家用車の活用を想定していますが、タクシー会社によっては会社車両の利用が可能なケースがあるかもしれません。

現在、制度設計を行っている最中ですが、年度内に制度を創設して、「地域の自家用車・ドライバーを活用して、タクシー事業の一環として運送サービスを提供する」の実現を目指しています。今回のライドシェア解禁では、安全性を確保しつつ、適切な法改正を行い、二種免許や緑ナンバーの存在意義、そしてタクシー会社の役割を維持する方法が取られていると考えられます。

 

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ライドシェアの求人掲載に向けた検討事項

ライドシェアの求人掲載に向けた検討事項

2024年2月時点では、まだ制度が出来上がっていないため求人の内容もほとんどオープンにできませんでしたが、求人募集の公開が始まっています。4月からライドシェアをスタートできるように、タクシー会社各社や国土交通省、厚生労働省、タクシー業界などが様々な検討を行っています。3月末までに法的根拠や就業規則は決まってくるでしょう。
以下の内容も、確定事項ではなく、現在検討されている内容になります。

年齢制限はあるのか?

結論、年齢制限はない可能性が高いです。国土交通省側では年齢制限は設けていません。高齢者ドライバーの判断力や運動能力の低下による運転事故が社会問題にもなり、あまり高齢者のタクシードライバーは推奨できないのが本音であるとは思いますが、雇用対策法により募集・採用における年齢制限は原則禁止されています。例外事由に当てはまらない限りは、雇用するタクシー会社が年齢を理由に不採用にすることができない可能性があります。

国の通達とタクシー業界団体や会社のガイドラインの違いについて

ライドシェアに関する国土交通省(国)の通達は、全国で適応することができるよう大まかなものが想定されています。法解釈や制度の創設など、地域や会社に依らないものになります。その通達を受けた上で、タクシー業界団体や各社がその地域やその会社に合わせたルールやガイドラインを設定しています。当然、通達を加味した内容になっているので、それぞれのガイドラインに沿った求人が掲載される予定です。

例えば、以下のようなガイドラインが想定されています。

  • 配車だけでなく、支払いもアプリ内決済に限定
  • 外部と通信できるドライブレコーダーの搭載
  • 業務委託ではなくアルバイトなどの雇用契約のみ

 

以上、現在わかっている範囲での日本型ライドシェアの制度や働き方を紹介しました。新しい情報が公開されたら、順次こちらでも更新していきます。

 

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